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カット代のない美容室
吉田 和寛
May 11 2016

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最近、石巻市の中心街の空きスペースにて、一日限定の変わった美容室が開かれていた。

美容室の名前は、『カット代のない美容室〜pay what you want〜』。

名前の通りカット代は決まっていない。

pay what you want(あなたが払いたいと思った分だけ)。

対価として隣接する飲食店のご飯やビールをお客さんから頂いたり、

チャリティーカットとして売り上げを熊本の美容室に全額寄付したり、

これまでの石巻にはない動き方をしている美容師、吉田 和寛。

活動を始めた理由や、活動を通して気付いたこと、見えてきたものをインタビュー。

 

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ーなぜ、このような活動をしようと思われたのですか?

 

吉田 : 自分のお店ではない場所でやってみたいというのと、自分の原点に立ち返ろうと思って。

今でも忘れられないんですが、自分が初めてお客さんを担当したのは23才の時で、相手は

高校生の女の子。大人のお客さんと違って、どういうふうにしてほしいという希望はあまり

なくて。「どうしたいですか?」と言わずにどうしたいかを引き出すこと、多感な時期の

女の子の希望を引き出すのに試行錯誤していました。

 
ーその経験が今につながっている。
 

吉田 : そのときから、お客さんの希望と、技術の提供、それに対する対価を意識するように

なりました。そして、お客さんのカットの価格に対する期待を飛び越えていきたいと。

最近、アメリカにある本屋で、本を読んでもらって、値段はお客さんが決めてください、

という『pay what you want』という考え方があることを知って。あなたが払いたい分だけ

という、お客さんに価値を委ねる部分が魅力的に感じて、自分もやってみようと思いました。

 

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ー実際に活動をしてみてどんな発見がありましたか?

 

吉田 : 場所なんてどこだっていいんだって思いました。ここは普段のお店に比べて狭いし、

シャンプー台もない。100パーセントの環境じゃないのに来てくれるというのは、

なんなのだろうと考えたときに、お客さんは体験に参加したいんじゃないのかなって。

お客さんでありつつも、切られているところを見られるというアトラクション的な要素。

場所ではなく、経験したことがないことを求めている人に会えたのは、(石巻市の)隣町

という場所に囚われていた自分にとって、自信になりましたね。

 

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ーいつもと違う場所でのカットは大変だったのではと思いますが。

 

吉田 : 普段のお店のような感覚ではカットできなくて、違和感がありました。そこで、

「ここは普段のお店ではないんだから、お店の自分とは、違う自分になればいいじゃん、

自分は攻めの美容師!」とスイッチを切り替えました。お客さんもこの場所にわざわざ

来てくださるのなら、普通の髪型にはしたくないんじゃないかと思いましたし。

 

ー例えば、どのようなカットをされたんですか?

 

吉田 : 女性の方がショートにしたいと悩んでいて、人生で一番長くしているロングヘアー

を耳出るぐらいまで切っちゃったり。こういうところをおもしろがる人なんだから、

せっかくなら思い出に残るぐらいのヘアースタイルにしようと。

 

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ーこれまでにも、このような活動はしてこられたのですか?

 

吉田 : いえ、震災前は視野がせまくて。与えられた仕事をこなしているだけという感じで。

楽しくなかったのかもしれないですね。震災後は、街中を中心に新しい人がたくさん来て。

自分にないものを持っている人と出逢って。地元の人が逆立ちしたって考えないようなこと

を軽くやっちゃうところとかすげえなあって。もっともっとその感性に触れたいと思ったし、

考え方を引っ張っていってもらった気がします。

 

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ー今後はどのような活動をしていこうとお考えですか?

 

吉田 : 遊び心を持って取り組みたいなと思っていますね。「なんかやってるらしいですね笑」

みたいなこと言われるんだけど、誰かを認めさせてやりたいとかという感情はなくて。

すごく大きいことは出来ないかもしれないけれど、ビッグじゃない、ナイスなこと。

たぶん、なんだろ、自分が面白いなと思うことは、きっと、みんなも面白いって思う

と思うんですよね。あの人がこうやっているなら自分はこうやってみようってなっていく。

美容業で大きいことをやってやろうとかは思ってないです。お店のサロンワークだけに

縛られない自分でありたいですね。

 

 

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吉田 和寛 ギャルソンリエ/スタイリスト

座右の銘は、「hairで貴方とコミュニケーション!」

address|宮城県東松島市赤井字新川前34-6

open|9:30~18:30

Write |  Yu Shimawaki

Photo | 佐藤 赤

Spot   |  IRORI