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半島の古民家食堂でゆったり味わう牡鹿ごはん
牡鹿半島 食堂いぶき
July 18 2017

 

 

今年の4月、牡鹿半島に食堂がオープンした。

「牡鹿半島 食堂いぶき」

 

 

目の前は海。光は風とともに店内を静かに流れている。この古民家は、あの日の津波に耐えた。

そして、6年の月日が経ち、生まれ変わった。古民家再生IBUKIプロジェクト事務局であり、

食堂を取り仕切る堀越さんは話す。

 

「今まで災害現場を見てきて、どんなに素晴らしい建物だったとしても、倒壊の危険性がある

とすぐ壊しちゃうんですよ。壊したら元には戻らないじゃないですか。ここも築8090

くらいって言われてるんです。これだけ立派な古民家、最初見た時は瓦礫だらけでしたけど、

壊すのはもったいないと思ったのが最初です。」

 

 

カウンター下の木の壁は、山のような波のような模様。素材は廃材を使用。

 

 

見上げると天窓から太陽の照明が降り注ぐ。

 

 

襖には、今にも音が聞こえてきそうな弁財天の絵。近くの島、金華山で祀られている神様。

 

 

襖の向こう側は和室部屋。裏側に描かれていたのは鹿の絵。金華山では神の使いとされている。

 

 

家具、装飾、インテリアのひとつひとつが古民家の環境と歴史に寄り添う。土地と共存してい

る空間は、室内でも自然の中にいるような開放感。再生への過程には、これまでの活動によっ

て生まれたご縁が、幾層にも積み重なっている。

 

「もともとは、阪神大震災のときに集まった有志のメンバーなんですよ、私たち。東日本大震災

 のときも集まったんだけど、被害が甚大すぎて、復興も阪神のときと同じくらい時間がかかる

 だろうからって。ちょっとやそっとじゃ終わらないから、ちゃんとしようって法人化したのが

 オープンジャパンなんですよ。」

 

 

「(この場所の設計や装飾を担当した)彼らは、震災後にボランティアに来て、炊き出しとか、

 絵を描いたりとかしてくれて。事務所に描かれた絵も彼らの作品で、明るくるように描

 いてもらったんです。」

 

 

新しい仲間を迎えながら緊急災害支援の日々。2011年の春が夏になろうとしていた頃、

食堂をつくろうというアイデアが生まれた。

 

「私たちの仲間で飲食店を経営している人がいて、『被災地でレストランをできないか』

 と相談を受けたんです。『自分は料理しかできないから、料理で被災地を応援したい』と。

 『それでは、ここ(古民家)を直すのでやってみませんか』と提案しました構想6年、製作

 4年、ハリウッド映画みたいでした。ようやく。

 

 

食堂いぶき人気メニュー「超ホタテ丼(大1500円、小1100円)」。その日にとれた新鮮なホタテは、

一口では食べきれない大きさ。かぶりついたときの食感と味の衝撃に、これまでのホタテの思い

出が遠のいていく。

 

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もうひとつの人気メニュー「牡鹿半島かきハンバーグ定食(1200円)」。切った瞬間にあふれ出す肉汁。

かきはミンチではなく、玉ねぎ同様にぶつ切りでハンバーグの中。口に入れた瞬間、お肉のジューシー

な香りと共に、かきの風味が口の中いっぱいにブワッと広がる。かき好きの方にオススメの一品。

 

「ホタテと牡蠣は石巻と女川産で、わかめは本当にそこで採れたものです。隣の小渕浜の漁師さん

から直接仕入れているので。超ホタテ丼は、夏限定でウニも乗せようかと。超ホタテ丼デラックス。

鯨の刺身もやりたいですね。土日は、観光で来られる方が多いので、喜んでもらえるように。」

 

 

食堂という日常的な場は、非日常時の活動とは違う形で、ヒト、モノの流れを生み出し始める。

 

「石巻の方って牡鹿半島にあんまり来ないんですよ。来てくれるきっかけを作れたのは良かった

 です。牡鹿に住まわれてた方は、たまたまテレビで(食堂のニュースを)見て、なつかしくな

 って来たんだよって言ってくれて。あとは、今まではお墓参りに来たとしても、親戚同士で帰

 りにコーヒーを飲んだりご飯食べたりするところがなくて、こういう集まるところができて良

 かったよって言って頂けたり。嬉しいですね。」

 

 

食堂いぶきでは、食事以外にも人が集まることができるコミュニティスペースを目指している。

 

「ライブもやりました。ウッドデッキで。こんなことしたいんですって企画を持ち込んでくれ

 ると凄くありがたいですね。」

 

 

「ワークショップもいいですね。和室でお茶を出して。1020人とかで縁側も使って。やっぱり

 場所がないんですよね。地区によっては集会所も減ってきていて、違う浜同士の交流場所がな

 いんです。横のつながりは大事ですよね。ここは、牡鹿の復興の一助になれたらなと思って

 ます。

 

 

みんなが集まれる食堂として息を吹き返した古民家。飲食店で働いたことがなかった堀越さん。

新しいヒト・モノの流れは、少しずつ循環を始めた。半島に流れる時間のようにゆっくりとし

た速度で。

 

「いぶきは春の息吹、呼吸ですよね。このあたりは建物があったんですけど、瓦礫になって何も

 なくなってしまったので、最初の息吹になればいいなと。」

 

 

「牡鹿半島 食堂いぶき」

address|宮城県石巻市大原浜字町18-1

open|11:30~20:00(土曜日11:00 ~ 20:00 日曜日11:00 ~ 16:00)

close|月曜日

tel|0225-25-7282

url|http://oshika-ibuki.com/

photo|Erina&シマワキ ユウ

write&edit|シマワキ ユウ